軽微な違反は「交通反則通告制度」で反則金を支払う
交通反則通告制度について
自動車交通の急速な発達に伴い、道路交通法違反事件の件数が飛躍的に増大しました。このため、すべての交通事件について、検察・裁判所が処理することになると、大変な負担となります。
このため、比較的軽微な交通違反事件については、処分対象者の選択により、反則金を納付することで、検察や裁判所による刑事手続や、少年事件に関する家庭裁判所の保護手続きなどを、免れることができる交通反則通告制度が設けられました。
交通反則通告制度の対象について
交通反則通告制度の対象となるのは、自動車、原付自転車などの運転者のした交通違反のうち、一定のものです。この対象には、無免許運転や酒気帯び運転、交通事故を伴う交通違反、40km以上の速度超過違反、無保険運転など、悪質・重大な交通違反は含まれません。これらの違反行為を行った場合には、刑事裁判か家庭裁判所の審判を受けることになります。
それ以外の比較的軽微な交通違反については、ほとんどの交通違反がこの制度の対象となります。なお、交通違反の種類についてはそれぞれに反則金が定められていて、その金額は、最高が、高速道路で大型車が35km~40km未満の速度超過違反を行った場合などの4万円から、最低の、免許証不携帯の3千円まで、さまざまです。
交通反則通告制度の手続き
反則行為を行うと、警察官または交通巡査員から、交通反則告知書(青キップといいます。)と納付書が渡されます。その告知内容に異議がなければ、その日から8日以内に、同時に渡された納付書で、それに記載された反則金を、金融機関で支払うと、手続は終了です。本来であれば、刑事手続等が必要になるのですが、反則金の納付で特別に免除されます。
たとえば、免許不携帯で警察官から青キップを切られた場合、その日から8日以内に3千円の反則金を、銀行などへ収めれば、違反に係る手続はすべて終了します。
一方、通告を受けた日から8日以内に、納付書で反則金の支払いをしなかった場合、違反者は、指定された通告センターに出頭して、通告書により、反則金納付の通告を受けることになります。その通告を受けた日から11日以内に、金融機関で通告された反則金を収めると、ここで手続き終了です。
告を受けた日から11日以内に反則金を納めなかった場合、事件は、検察官に送致され、検察官により起訴され、刑事裁判にかけられるか、または、少年の場合には、家庭裁判所の審判に付されることになります。
警察官の処分に不服のある場合
お、交通違反に対する警察官の処分に不服があり、裁判で争いたいと考える場合には、反則金を支払ってはなりません。反則金を支払うと、自分の非を認めることになり、後に裁判で争えなくなります。反則金を支払わないでいれば、いずれは、裁判や審判に進みますから、その場で、警察官の処分に対する不服を述べていくことになります。
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免許の停止処分や取消処分に対して不服があれば申し立てができる
仮停止処分の場合の「弁明の機会の付与」について
免許の仮停止処分とは、以下のような場合に、交通事故の起きた場所を管轄する警察署長が処分の対象となる者から、一定の期間運転免許を停止するというものです。交通事故を起こした日から最長で30日間、免許の効力を停止することができます。
- 交通事故で人を死傷させた上、救護義務に違反(当て逃げ)した場合
- 飲酒や麻薬などの影響で、正常な状態で自動車の運転ができない状態で運転し、交通事故を起こした上、人を死傷させた場合
- 過労、病気、薬物、酒気帯び等の影響により、正常な運転ができない状態で自動車を運転し、交通事故を起こした上、人を死亡させた場合
なお、警察署長がこの処分を行う場合には、処分と対象となるものに対して、弁明の機会を与えなければなりません。弁明とは、処分を受ける者が処分を行う行政庁に対して意見を述べることです。
ですから、この仮停止処分に不服がある場合には、その意見を記載した弁明書を提出して、この処分に対して異議を述べることができます。
この弁明の機会の付与は、仮停止の処分が行われた日から5日以内に行わなくてはならないと規定されております。この弁明により、処分対象者の主張が認められれば、処分が取り消される場合もあります。
免許停止には「意見聴取手続き」
次のような理由により、免許取り消し、または90日以上の免許の停止をしようとする場合には、処分庁である公安委員会は、処分対象者から意見の聴取を行わなければならないと規定されています。
- 交通違反点数が一定水準を超えた
- 交通事故を起こし人を死傷させた上救護義務違反をした
- 飲酒・麻薬により交通事故を起こし人を死傷させた
- 過労、酒気帯び、薬物、病気の影響を受ける状態で運転し、人を死亡させた
- 危険運転致死傷罪などを犯した
- 自動車を利用して故意に人を死傷させた、または建造物を損壊した
この意見聴取は、まず、公安委員会が、処分対象者に、処分を行う理由、意見聴取の期日、場所を記載した通知文を、送付します。処分対象者は、その聴取の期日に出頭し、処分に対し意見を述べ、また、有利な証拠を提出できます。なお、意見を述べるのは本人でも代理人でも構いません。
ですから、処分が警察のでっちあげだとか、交通事故を起こしたのは自分ではないなどの、処分に対する不服があれば、ここで主張します。なお、正当な理由なく、この聴取の期日に処分対象者が出頭しない場合には、行政庁は、この意見聴取をしなくても、免許停止などの処分をすることができるとされています。
異議申し立てについて
なお、免許の停止、取り消しの処分については、処分を行った公安委員会に、行政不服審査法にもとづく異議申し立てをすることができます。この異議申し立ては、処分を知った日から60日以内に行わなくてはなりません。
ただし、この審査は処分を行った行政庁が行いますから、異議申し立てをしても、処分が取り消されることはほとんどないと考えられます。
取消訴訟について
免許の停止、取り消しの処分について、公安委員会に異議申し立てをしたけれども、異議申立てを棄却する決定があり、処分が覆らない場合は、さらに、裁判所に対して、裁決取消訴訟を提起することができます。
なお、異議申し立てを行わず、裁判所に直接、行政処分の取消訴訟を提起することもできます。なお、この取消訴訟は、処分を知った時または公安委員会の決定(裁決)を知った時から6ヶ月以内に提起しなくてはなりません。
ただし、現実には、弁護士に依頼して争った場合でも、交通事故に関する免許停止や取り消しの処分が覆ることは、ほとんどないそうです。
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運転免許の停止処分・取消処分
行政処分としての免許停止・免許取り消し
交通事故を起こした場合の行政処分の代表的なものが、免許停止や免許取り消しです。運転免許は、一般的には運転行為を禁止しておき、必要な知識と心構えを持つものに対してのみこの禁止を解除し、適法に自動車運転をできるようにしたものです。
この免許の付与は、行政行為にあたります。ですから、交通事故を起こした者などに免許の停止や取り消しを行うことは行政処分になります。
点数制度について
自動車免許には、点数制度が設けられています。この点数制度とは、交通事故や交通違反の各種類に対して、あらかじめ点数を定めておき、その種類の事故や違反を運転者が犯した場合に、その決められた点数を付与します。そして、原則として、過去3年間に付けられた点数を合計して、一定の基準に達した場合、運転免許の停止や取り消しを行うというものです。
点数については、たとえば、一般的な交通違反行為には、50km以上の速度超過が12点、無保険運転が6点、信号無視が2点、無灯火走行が1点、のように点数が決められています。また、特定の悪質な交通違反行為には、自動車を利用して故意による殺人行為を行った場合が62点、飲酒運転で交通死亡事故を起こした場合が62点、麻薬運転35点、当て逃げ35点、のように点数が付けられています。
なお、一般違反行為に対する点数と特定違反行為に対する点数を基礎点数といいます。
交通事故を起こした場合には、付加点数が加算されます。この付加点数は、専ら違反者の不注意により交通死亡事故を起こした場合の20点から、専ら違反者の不注意によらないで交通事故により治療期間15日未満の傷害事故または建造物損壊などを起こした場合の2点までが定められております。
たとえば、信号無視により交通事故を起こして他人の住居を損壊し、それが専ら違反者の不注意によらない場合には、基礎点数2点+付加点数2点の合計4点になります。また、麻薬運転により交通死亡事故を起こし、それが専ら違反者の不注意による場合には、基礎点数35点+付加点数20点で50点です。
どのような場合に運転免許の停止・取り消しになるのか
運転免許の停止や取り消しは、この点数と過去3年以内に受けた免許停止などの行政処分の回数により定まります。なお、点数は、原則として、過去3年間に犯した交通違反などの累積点数となります。
たとえば、一般違反行為を行った方(合わせて交通事故を起こした場合も含む)の場合、過去3年間の免許停止等行政処分の回数が0回の方だと、過去3年間の累積点数が6点~14点で免許停止、15点~24点で欠格期間(運転免許の交付を受けることができない期間) 1年免許取り消し、25点から34点で欠格期間2年の免許取り消し、35点~39点で欠格期間3年の免許取り消し等となります。
過去3年間の免許停止等の回数が1回の方は、4点~9点で免許停止、10点~19点で欠格期間1年の免許取り消し、20点~29点で欠格期間2年の免許取り消し等となっています。
一方、特定違反行為を行った方(合わせて交通事故を起こした場合も含む)の場合、過去3年間の免許停止処分等の回数が0回の方で、35点~39点で、欠格期間3年の免許取り消し、40点~44点で欠格期間6年の免許取り消し、などとなっています。また、過去3年間の免許停止処分等の数が1回の方は、35点~39点で欠格期間4年以上の免許取り消し、40点から44点で欠格期間5年の免許取り消しなどとなっています。
このように、過去3年間の交通違反点数と、過去3年間に受けた免許停止などの回数により、免許停止や免許取り消しの行政処分が定まります。
つまり、交通事故や交通違反を起こして、または、それを繰り返して、過去に受けた免許停止などの回数と交通違反点数が一定の基準を超えた場合、免許停止や取り消しの処分を受けることになる、ということです。
免許における点数制度とは
免許の点数制度の概要
免許の点数制度とは、過去3年間に起こした交通違反や交通事故に対して、一定の点数を付け、それが一定の数以上になったものに対して、免許の停止や取消し等の行政処分を行うという制度のことです。
この点数制度は、交通違反を行った場合に付けられる点数により、危険性の高い運転手を判断し、その危険性の高い運転手を、運転免許の停止や取り消しなどの行政処分を通して、道路交通の場から排除しようするものです。
基礎点数
交通違反にはさまざまな種類があります。シートベルト違反、スピード違反、信号無視などです。これらの違反行為一つ一つに点数がつけられています。なお、違反行為には2種類あります。それは、一般違反行為と、特に危険・悪質な違反である特定違反行為です。
一般違反行為については、最低の「シートベルト装着義務違反」などの1点から、最高の「0.25mg/L以上の酒気帯び運転」の25点までの点数が付されています。一方、特定違反行為には、最低の「救護義務違反(ひき逃げ)や酒酔い運転」などの35点から最高の「運転殺人」などの62点までの点数が付されています。一般違反行為と特定違反行為に付された点数を基礎点数といいます。
付加点数
一方、交通事故を起こしてしてしまった場合には、基礎点数に加えて、付加点数が加算されます。この付加点数は、最低の、「専ら違反行為者の不注意によらない場合で、被害者に治療期間15日未満の怪我を追わせた場合」などの2点から、最高の、「専ら違反行為者の不注意による場合で、被害者を死亡させた場合」の20点までが規定されています。
たとえば、脇見運転で交通事故を起こし、相手方に軽いけがを負わせた場合には、(基礎点数)安全運転義務違反の1点+(付加点数)専ら違反者の不注意による、被害者の治療期間15日未満の交通事故の2点、合計3点がつけられます。
また、酒酔い運転で、専らその違反者の不注意が原因で交通事故を起こして、人を死亡させた場合、(基礎点数)酒酔い運転35点+(付加点数)死亡事故20点の合計55点が付けられます。
点数適用のルール
行政処分は、交通違反をした、または交通事故を起こした運転手に付けられた点数の大きさと、過去3年以内に受けた免許停止などの行政処分の回数により定まります。
たとえば、一般違反行為を行ったとして行政処分がなされる場合には、過去3年間に運転免許の停止処分の回数が0回の場合には、6点~14点で免許停止、15点~24点で、免許取消しと1年間の欠格期間(免許取得が禁止される期間)、25点から35点で免許取消しおよび2年の欠格期間、などと定められています。
また、過去3年間に免許停止などの処分を1回受けたことがある者は、4点から9点で免許停止、10点から19点で免許取消しと1年の欠格期間、20点から29点で免許取消しと2年の欠格期間、などと定められています。
このように、過去3年間の免許停止処分の回数と付けられた点数により、行政処分の内容が細かく規定されています。
同様に、特定違反行為を行った場合にも、過去3年間に受けた行政処分の回数と、付けられた点数に応じて、免許停止や免許取消しおよび欠格期間が、詳細に規定されています。
なお、過去3年間の違反行為に対する点数は、原則として累積されますから、過去の違反行為で点数が付いていれば、ほんの軽い交通違反をしただけなのに、累積制度により行政処分を受ける可能性があるので、注意が必要です。
交通違反などに対する行政処分は、免許停止、免許取消しおよび欠格期間の設定によるのですが、その処分の重さや期間は、このように、過去3年間に受けた行政処分の回数と、基礎点数や付加点数にもとづいて決定されるという仕組みになっています。