車同士の事故における対応方法は?ケース別に過失割合もご紹介

車と車との事故

記事監修者紹介
ファイナンシャルプランナー髙橋洋子髙橋 陽子
日本生命保険相互会社にて3年半以上勤務し、年間100組以上のコンサルティングを行う。
その後、2019年4月より当メディアにて保険をはじめとする金融記事の監修を務める。

転回中に衝突した場合の自動者の事故の過失割合

転回中に衝突した事故の過失割合について

片側1車線の道路をUターンすることはよくあります。そして、このUターン中に、反対車線を走行中の車と接触するという事故もよく起こります。このような事故の過失割合について考えてみます。このパターンの事故は、大きく分けて2つの類型があります。

一つは、転回中に、転回前と同一方向からくる車両に追突される事故が起こる場合です。もう一つは、転回が終了した後に、転回前から見て反対方向からくる車と衝突事故が起こる場合です。

転回中に、転回前と同一方向からくる車と起こした事故の過失割合について

まず、転回中に、転回前と同一方向からくる車に追突される事故が起こった場合の過失割合です。転回中の車をB車、追突する車をA車とすると、過失割合はA車20%B車80%です。

なお、この場合、転回するB車にはウインカーを点滅させるなど合図をする義務があります。B車がこの義務を履行しなかった場合には、過失割合は、A車10%B車90%と、当然のことながら、B車の負担分が重くなります。

転回終了後に、転回前の方向の反対方向からくる車と起こした事故の過失割合

次に、転回終了後に、転回前の方向の反対方向からくる車と衝突事故を起こしてしまった場合の過失割合です。転回を終了した車をB車、反対方向から来た車をA車とした場合、過失割合はA車30%B車70%です。

この場合も、転回を行ったB車がウインカー点滅などの合図を忘れていた場合には、B車の過失割合が当然に増加します。この場合には、A車25%B車75%になります。

なお、転回終了後に追突した車の方が、転回を開始した直後に追突した車よりも過失割合が高いのは、転回を開始した直後の車を後続車が回避するのは、転回を終了した後の車を回避するよりも、車間距離が短いためにより難しく、この関係を反映したものです。

先行車が急ブレーキをかけた場合の事故の過失割合

先行車が急ブレーキをかけた場合の過失割合

先行者が急ブレーキをかけた場合の事故とは、簡単に言えば追突事故のことです。この事故の過失割合を考える場合、大きく分けて2つのケースが考えられます。一つは、前者が急ブレーキをかけたため事故が発生した場合です。もう一つは、前者が駐停車中で、後者が追突した場合の過失割合です。

まず、前車が急ブレーキをかけ事故が起きた場合の過失割合についてですが、急ブレーキをかけた前車をA車、追突した車をB車とします。A車が、法定速度で普通に走行中、理由なく合図もなく突然に急ブレーキをかけ、後続のB車が避けきれずに追突してしまった場合を想定します。この場合の過失割合はA車20%B車80%です。

このケースで、理由もなく合図もなく突然急ブレーキをかけて事故を起こしたA車の過失割合が20%で、追突したB車の過失割合が80%とは、非常に不公平な気もします。

しかし、道路交通法第26条では、車両等は、同一の進路を進行している車両の直後を進行するときは、その直前の車両等が停止した時においてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、保たなければならない、と規定しています。

この規定があるため、仮にA車が突然急ブレーキをかけて事故が発生した場合でも、悪いのは、前車の急ブレーキにも十分に対応できる車間距離を保っていなかったB車ということになります。

先行車が駐停車中の場合の過失割合

次に、A車が駐停車中で、後続のB車がA車に追突した場合の過失割合は、A車0%B車100%です。なお、A車が発見が非常に困難な場所に駐停車していたとか、A車が駐停車禁止場所に駐停車したいた場合には、B車の過失割合が10%から20%減じられます。

車線変更の際に発生した事故の過失割合

進路変更車と後続直進車の事故の基本過失割合について

片側2車線以上ある道路で、右左折や追越しのため進路変更を行うことはよくあります。その際、後続の直進車と接触事故を起こしてしまうことがあります。この場合の基本過失割合は、進路変更をした車をB車、後続の直進車をA車とした場合、A車30%B車70%となります。

なお、この基本過失割合は、B車が右側から左側へ車線変更して事故を起こした場合でも、反対に、右側から左側へ車線変更して事故を起こした場合でも、同じ30%対70%の比率となります。

修正要素について

最終的に定まる過失割合は、この基本過失割合に修正要素を考慮して決まります。進路変更を行ったB車側の加算要素としては、B車が進路変更の合図をしないで進路変更を行った場合+10%、同じく、B車が進路変更禁止場所で進路変更を行った場合+10%、などがあります。

一方、A車の加算要素としては、A車が、交差点付近でよく見かける、導流帯(ゼブラゾーン)を走行していた場合があります。この場合はAの過失割合が+10%~20%程度加算されます。

なお、導流帯とは、車の流れをスムーズにするために設けられている区域で、幹線道路から誤って左折レーンや右折レーンへ入ってしまわないように車を誘導します。

この導流帯は、直進車の走行を規制するために設けられており、直進車は原則として走行できませんから、直進車であるA車がこの導流帯を走行中に事故が起きた場合には、A車の過失割合が高く評価されることになります。

車を追い越す際に発生した事故の過失割合

追越し車と追越される車との交通事故の基本過失割合

同一方向に進行する車両を追い越す際に、追い越す側の車が、追い越される側の車に誤って追突するなどの事故が起こる場合があります。この場合の事故の基本過失割合は、追い越される側をA車、追い越す側をB車とした場合、A車10%B車90%です。

修正要素について

さて、最終的に定まる過失割合は、上で述べた基本過失割合に、実際の事故のさまざまな状況を正確かつ的確に過失割合に反映するための修正要素を考慮して、決められます。

まず、追越される側のA車の過失割合が増加する要素として、A車に避譲義務違反がある場合(B車が救急車などである場合)+10%、B車の追越し中にA車が加速した場合+20%、A車に速度規制違反などの過失があった場合+10%、A車に酒気帯び運転などの重過失があった場合+20%などです。

一方、B車の過失割合が増加する要素としては、追越し禁止区域の追越しの場合+10%、B車に速度規制違反がある場合などの過失があった場合+10%、B車に酒気帯び運転があったなどの重過失があった場合+20%です。

追い越しに関して気をつけること

道路交通法第28条から第30条までに、追越しに関する交通規制が定められています。また、自動車学校などで配布される交通教本などにも、追越しの場合の正しい運転方法が記述されています。

追い越しは、重大事故を引き起こしやすい非常に危険を伴う行為ですので、これらの交通規制や交通方法にしたがって、的確に丁寧に運転動作を行うことにより、追越し中に絶対に事故を起こさないようにしなければなりません。

対向直進車同士の事故の過失割合

対向直進車同士の事故について

対向直進車同士の事故とは、簡単に言えば、一方の車両がセンターラインを超えて走行し、反対側から走ってきた対向車と衝突する事故のことです。正面衝突となる割合が非常に高く、重大事故につながり易い危険な事故類型です。

この、対向直進者同士の事故に関して、センターラインをはみ出して走行した車両をB車、その対向車をA車として、A車とB車が衝突した場合の事故の過失割合は、A車0%B車100%です。

ですから、たとえば、この事故によりA車もB車も大破し、また、A車の運転者もB車の運転者も重傷を負い、車の修理費や負傷者の治療費や入院費が、A車側で200万円、B車側で300万円かかったとすれば、センターラインを超えて事故を起こしたB車側が両者の合計の500万円の費用を負担することになります。

なお、実際の過失割合は、今まで述べた基本過失割合に修正要素が考慮されます。基本過失割合でB車の割合が100%ですから、修正要素は、A車の減算要素のみ問題となります。

A車の減算要素としては、A車に速度規制違反や前方不注意などの過失があった場合、または、酒気帯び運転や無免許運転などの重過失があった場合、等が考えられます。

A車に過失があった場合には、その過失の程度に応じて、過失割合が10%~20%程度加算されます。したがって、A車に過失があった場合の最終的な過失割合は、だいたいA車10%~20%B車90%~80%程度となります。

とにかく、対向車線にはみ出して事故を起こした場合、重大事故につながりやすいのみならず、損害賠償の点においても非常に不利な立場にたたされます。くれぐれも、このような事故を起こさないようにしなくてはなりません。

路外出入車との事故の過失割合

路外出入車と直進車の交通事故の過失割合

駐車場から道路へ入ろうとする場合、反対に、道路から駐車場へ入ろうとする場合、道路を走行中の他の車と接触事故を起こすることはよくあることです。以下では、そのような場合の事故の過失割合について考えてみます。

路外から道路に入る場合

駐車場などの道路外から道路に入る場合、左折して入る場合と右折して入る場合があります。この状況で、道路上を走行中の車をA車、左折または右折して道路に入ろうとする車をB車とします。この場合の過失割合はA車20%B車80%です。

なお、一般的には、右折で入るほうが左折で入るよりもB車の危険が大きく、右折の場合と左折の場合とでは過失割合は異なるようにも思われますが、修正要素を考慮しないとすれば、基本過失割合はどちらの場合でも同じです。

路外に出るために右折する場合

駐車場などに入るために、道路を右折中、直進してくる対向車と衝突事故を起こすことはよくあることです。この状況で、直進中の車をA車、右折により道路外に出ようとする車をB車とします。このA車とB車が事故を起こした場合の過失割合は、A車10%B車90%となります。

修正要素について

路外から道路に入る、または路外に出る車と、直進車との事故の過失割合は、だいたいいままで述べたとおりです。ですが、最終的な過失割合は、これに修正要素が考慮されて決定します。

たとえば、直進車であるA車側にスピードの出しすぎや前方不注意があれば、基本過失割合よりもA車の過失割合が高くなります。また、B車側にも、合図をしなかった場合などには、基本過失割合よりもB車の過失割合が高くなります。

T字路での車同士の事故の過失割合

T字交差点での車同士の事故の過失割合について

T字型交差点での車同士の事故の過失割合について考えてみます。この事故の過失割合については、大きく分けて2類型があります。一つは、直進車と、突き当たり道路から右左折して進入してくる車との事故の場合です。もう一つは、T字型交差点で右折者同士が事故を起こした場合です。

直進路の直進車と右左折車の事故の場合

まず、直進車と右左折車の事故について考えてみます。T字型交差点で交差する道路の幅がほぼ同じだとすると、直進車をA車、右左折者をB車とし、A車とB車が事故を起こした場合の過失割合はA車30%B車70%です。

同じく、直進車と右左折車の事故で、T字型交差点で交差する道路に明らかな広狭差があり、広い方の道路をA車が直進し、狭い方の道路からB車が右左折により交差点に進入して事故を起こした場合の過失割合は、A車20%B車80%です。

また、直進車をA車、右左折により交差点に進入しようとする車をB車とし、B車の側に一時停止の規制があった場合、この両車が事故を起こした場合の過失割合はA車15%B車85%です。

最後に、直進車A車が直進している道路が優先道路であり、このA車と交差道路から右左折により進入してきたB車が衝突した場合の過失割合はA車10%B車90%です。

右折車同士の事故の場合

次に、右折車同士の事故について考えてみます。まず、直線路から交差路へ右折したA車と、交差路から直線路へ右折したB車が交通事故を起こした場合の過失割合はA車40%B車60%です。

広狭差のある道路が交差するT字交差点で、A車が広路から狭路へ右折し、反対にB車が狭路から広路へ右折して、事故が発生した場合の過失割合はA車30%B車70%です。

交差する道路側に一時停止規制があるT字交差点で、直線路から交差路へうせつするA車と、一時停止規制のある交差路側から直線路へ右折するB車が事故を起こした場合の過失割合は、A車25%B車75%です。

最後に、直線路が優先道路であるT字交差点で、優先道路から非優先道路へ右折したA車と、非優先道路から優先道路へ右折したB車が、交通事故を起こした場合の過失割合はA車20%B車80%です。

左折車と直進車の事故の過失割合

左折車と直進車の交通事故について

信号機のある交差点では、一方の車が赤信号を無視して交差点に進入した場合など特殊な事情がなければ、左折車と直進車が衝突事故を起こすことは通常は考えられません。

しかし、信号機のない交差点では、一方の車が交差点に侵入するタイミングを誤って、左折車と直進車が交通事故を起こすことがあります。ここでは、信号機のない交差点で、左折車と直進車が交通事故を起こした場合の過失割合について考えてみます。

道路幅がほぼ同じ交差点の場合

道路幅がほぼ同じ交差点で、左折車と直進車が事故を起こしてしまった場合の過失割合は、直進車をA車、左折車をB車とした場合、A車50%B車50%です。なお、この交差点が見通しのよい交差点であった場合、直進車の過失が重く判断され、過失割合はA車60%B車40%となります。

一方が明らかに広い交差点の場合

一方が明らかに広い道路の交差点の場合で、A車が広い道路を直進中で、B車が狭い道路から広い道路へ左折中に、交通事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車30%B車70%です。

一方が優先道路の交差点の場合

一方が優先道路である交差点で、優先道路を直進中のA車と、非優先道路から優先道路へと左折中のB車が交通事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車10%B車90%です。優先道路を走行中の車に対して、非優先道路から左折で侵入してぶつけてしまった場合には、相当に重い責任を負わされます。

一方に一時停止の規制がある交差点の場合

一方に一時停止に規制がある交差点で、一時停止の規制がない方の道路を直進中のA車と、一時停止規制のある道路を直進中のA車と、一時停止規制のある道路から交差点に進入し左折中のB車が衝突した場合の過失割合は、A車20%B車80%です。

なお、この場合で、B車が交通規制にしたがって、交差点侵入前に一時停止を行ったにも関わらず、A車と衝突した場合には、B車の自己責任は減じられて、過失割合はA車30%B車70%となります。

一時停止をすることで、事故を起こした場合でも、過失割合が相当減じられます。日頃から、事故に巻き込まれた場合を想定して、交通規制は遵守しておくことが重要です。

右折車同士の過失割合

右折車同士の交通事故の過失割合について

信号機のある交差点では、一方の車両が赤信号の無視をした場合を除いて、右折車同士が衝突するということはほとんどありません。しかし、信号機のない交差点では、双方の車が同時に交差点に進入し右折した場合などのように、右折者同士の事故が起こる場合があります。

この信号機のない交差点で、右折者同士が右折するタイミングを誤り、交差点内で衝突するという交通事故が起こった場合の過失割合について、各ケースに分けて考えてみます。

道路幅がほぼ同じ交差点での事故の場合

道路幅がほぼ同じ交差点で、交差点で右折中のA車とB車が事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車60%B車40%です。なお、この過失割合は、B車からみてA車が左方者である場合でも右方車である場合でも、変化はありません。

広狭差のある交差点での事故の場合

広狭差のある交差点で、A車が広路から狭路へ右折中で、B車が狭路から広路へ右折中に、交通事故が発生した場合の過失割合は、A車30%B車70%です。この場合も、B車から見て、A車が左方車であっても右方車であっても、同じ過失割合となります。

一方が優先道路の交差点の場合

一方が優先道路である交差点で、A車が優先道路から非優先道路へ右折中、B車が反対に非優先道路から優先道路へと右折中に交通事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車20%B車80%です。この場合も、B車から見て、A車が左方車であっても右方車であっても、同じ過失割合となります。

事故を起こした場合の責任は、広狭差のある道路の広い方の道路や優先道路から狭い道路や非優先道路へ右折しようとする車のほうが、反対の条件の車両より、原則として、軽くなります。

一方に一時停止の規制がある場合

交差する道路の一方に一時停止規制がある交差点で、A車が一時停止規制のない道路から進入し右折中で、B車が一時停止規制のある道路から進入し右折中、衝突事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車25%B車75%です。

なお、この場合で、B車が規制にしたがって一時停止を行った後、交差点に進入していた場合には、交通ルールを遵守したB車の過失割合が減じられ、A車35%B車65%となります。

信号機のある交差点での右折車と直進車との事故の過失割合

信号機のある交差点での右折車と直進車の事故の5つのパターン

信号機のある交差点で、同一道路を走行中の右切車と直進車が衝突する事故の過失割合について考えてみます。この事故の場合、原則として、事故車が交差点に侵入した際の信号の表示を基準として、5つの場面が考えられます。

  1. 直進車が青信号、右折車が青信号の場面
  2. 直進車が黄信号で侵入、右折車が青信号で侵入、右折時に黄色信号
  3. 直進車が黄色信号で侵入、右折車も黄色信号で侵入
  4. 直進車が赤信号で侵入、右折車が青信号で進入、右折時に赤信号
  5. 直進車が赤信号で侵入、右折車が青矢印の右折可信号で侵入

直進車が青信号、右折車も青信号で交差点に進入した場合

まず①の直進車、右折車とも青信号で交差点に侵入し、事故を起こした場合の過失割合については、直進車をA車、右折車をB車とした場合、A車20%B車80%です。

直進車が赤信号、右折車が青信号で交差点に進入した場合

②の直進車(A車)が赤信号で交差点に進入し、右折車(B車)が青信号で交差点に進入した後、右折時に黄色信号に変わっていた場合で事故を起こした場合、その過失割合はA車70%B車30%です。

直進車が黄信号、右折車も黄信号で交差点に進入した場合

③の直進車(A車)、右折車(B車)とも黄色信号で交差点に侵入し、交差点内で交通事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車40%B車60%となります。この場合は、右折車側の過失割合が高くなります。

直進車が赤信号で交差点に進入、右折車が青信号交差点に進入し、途中で赤に変わった場合

④の直進車(A車)が赤信号で侵入、右折車(B車)が青信号で侵入、右折時に青から赤へと信号が変わっていた場合の過失割合はA車90%B車が10%です。衝突時に赤信号同士の事故でも、進入時赤信号のA車の過失割合が圧倒的に高くなります。

直進車が赤で交差点に進入、右折車が右折可信号で交差点に進入した場合

⑤の直進車(A車)が赤で交差点へ侵入、右折車(B車)が青矢印の右折可信号で交差点に侵入し、交通事故を起こした場合の過失割合はA車100%B車0%です。基本過失割合は以上のとおりです。

修正要素の加算について

これに修正要素が考慮されます。まずA車の加算要素についてですが、速度違反(交差点内の制限速度は時速20km以下です。)があった場合、交差点に入った場合、前方車両などのために交差点内で停車せざるを得なくなる恐れがある場合などがあります。

また、交差点に侵入してはならないという道路交通法第50条第1項の規定がありますが、これに違反し、B車が先に交差点に侵入しているにもかかわらず、後から交差点に侵入し、事故を起こした場合も、A車の加算要素に該当します。

一方、B車の加算要素として、交差点内徐行せず、早回り右折(通常の右折レーンの内側を右折)、大回り右折(通常の右折レーンの外側を右折)、直近右折(直進車の直前での右折)、ウインカーを出さなかった、自車が大型車であった、広路・優先道から狭路・劣後道への右折であった、などの要素があります。

これらの要素があると、一つの要素につき5%~20%の割合で過失割合が増加します。なお、複数の加算要素がある場合、全部まとめて5%~20%加算されるのではなく、その加算割合は累積されます。

信号機がない交差点での右折車と左折者との事故の過失割合

過失割合の基本

信号機のない交差点で、交差点を左折中のA車と、右折中のB車が交通事故を起こした場合、その事故の基本過失割合は、A車30%B車70%となります。この基本過失割合に、さまざまな修正要素を加味して、最終的な過失割合が定まります。

B車が大回り右折をして事故を起こした場合について

交差点で右折しようとするときは、あらかじめ道路の中央に寄り、交差点の中心付近を走行しなければならないとされています。このルールに違反して、B車が、大きく外側に膨らんで右折をして事故を起こしてしまった場合、B車の事故の責任が重くなります。したがって、過失割合は、A車20%B車80%となります。

B車が、片側2車線道路の第1車線に侵入しようとして事故を起こした場合について

B車が、交差点の右折により片側2車線道路の第1車線に進入しようとして、左折中のA車と事故を起こしてしまった場合には、B車の大回り右折の場合と同様、B車の事故責任が重く問われます。したがって、この場合の過失割合もA車20%B車80%です。

A車の左折方法違反があり、事故を起こしてしまった場合

交差点で左折する場合、あらかじめできるだけ道路の左端により、交差点の側端に沿って徐行して通行しなければなりません。A車がこの左折方法に違反し、大回り左折や、徐行しないで左折した場合には、基本過失割合に比して、A車の事故責任がより重くなります。したがって、この場合の過失割合は、A車40%B車60%です。

A車が片側2車線道路の第2車線に進入しようとして事故を起こした場合について

A車が、左折により、片側2車線道路の第2車線(内側の車線)に進入しようとして、右折してきたB車と交差点内で衝突する事故を起こしてしまった場合を考えます。

この場合は、交通ルールに則った左折方法では、左折の場合には、片側2車線道路の第1車線に進入するのが原則ですから、この原則に違反するA車の責任がより重く問われます。したがって、過失割合は、A車40%~50%、B車60%~50%となります。

交差点での右折車と左折車の事故の場合、左折車30%右折車70%という基本過失割合があります。しかし、交差点での交通ルールを遵守していないと、遵守していない方がより重い責任を問われます。左折の場合も右折の場合も定められた走行方法があります。日頃からこの方法にしたがって、交差点を走行することが大切です。

信号機のある交差点で右折車と左折車の事故の過失割合

信号機のある交差点で、右折車と左折者の事故の過失割合

信号機のある交差点で、左折中のA車と右折中のB車が交通事故を起こした場合の過失割合について考えてみます。信号機のある交差点での車同士の事故の場合、過失割合のだいたいの部分は、A車とB車が交差点に侵入する際に信号の色が何色であったかで決まります。

事故を起こした際に、A車が青信号で交差点に進入していた場合

交差点を左折中のA車と、交差点を右折中のB車が交差点内で事故を起こしたとします。この場合、A車が青信号で交差点に進入し、B車も青信号で交差点に進入していれば、事故の過失割合はA車30%B車70%です。

A車が青信号で交差点に進入している場合、対向方向から来るB車が黄信号または赤信号で交差点に進入してA車と衝突することはありえませんから、この場合は、B車が青信号で侵入する1パターンが存在するのみです。

事故を起こした際、A車が黄信号で交差点に侵入していた場合

交差点を左折中のA車と、交差点を右折中のB車が交差点内で事故を起こした場合で、A車が黄信号で交差点に進入していた場合、大きく分けて2つのパターンがあります。

一つは、B車が青信号で交差点に進入し、右折中に黄信号に変わり、そこで事故になった場合です。この場合の過失割合はA車80%B車20%です。B車は先に交差点に進入していたわけですから、後から交差点に入って事故を起こしたA車の過失割合が高く評価されます。

もう一つは、B車が黄信号で交差点に進入していた場合です。この場合の過失割合はA車50%B車50%です。この場合は、両者がほぼ同時に交差点に進入していますから、A車の過失割合が特に高く評価されることはありません。

事故を起こした際、A車が赤信号で交差点に進入していた場合

交差点を左折中のA車と、交差点を右折中のB車が交差点内で事故を起こしたケースで、A車が赤信号で交差点に進入していた場合は、大きく分けて3パターンがあります。

まず一つ目は、B車が青信号で交差点に進入し、交差点で右折中に信号が青→黄→赤と変化し、赤になった時点で事故が起きた場合です。この場合の事故の過失割合はA車100%B車0%です。

次に、B車が黄信号で交差点に進入し、交差点で右折中に信号が青→黄に変化し、黄になった時点で事故が起きた場合です。この場合の事故の過失割合はA車80%B車20%です。

最後に、B車が赤信号で交差点に進入し、A車と接触して事故になった場合です。この場合の過失割合は、A車60%B車40%です。信号無視同士の事故ですので、A車とB車の過失割合の差は僅少です。

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信号機がない交差点での右折車と直進車との自己の過失割合

同一道路を対向方向から侵入する右折車と直進車の事故の場合

まず、交差する道路の道路幅がほぼ交差点で、同一道路を対向方向から侵入する右折車と直進車の事故について考えてみます。A車を直進車、B車を右折車とすると、過失割合はA車30%B車70%です。

一方、交差する道路に広狭さがある交差点で、同一道路を対向方向から侵入する右折車と直進車の事故について考えてみます。A車を広い道路から交差点に進入する直進車、B車を広い道路から交差点に進入し、狭い道路に対して右折する右折車とした場合、この両車の事故の過失割合はA車20%B車80%です。

なお、ここで、広狭差のある道路の交差点での事故で、直進車であるA車の過失割合が低いのは、右折車と直進車では直進車が優先するという直進車優先の原則が、道路幅の広い交差点では、より強力に作用するからです。

交差道路から侵入する右折車と直進車の事故の場合

次に、道路幅がほぼ同じ交差点で、A車とB車が交差道路からそれぞれ交差点に侵入して事故を起こした場合を考えてみます。A車からみてB車が左側から交差点に進入および右折中に、A車の左側部分に衝突して事故を起こした場合の過失割合は、A車40%B車60%です。

一方、A車からみてB車が右側から交差点に侵入しおよび右折中、A車の右側部分に衝突して事故を起こした場合の過失割合は、A車30%B車70%です。なお、B車が左側から交差点に侵入した場合の方が、A車の過失割合が高くなるのは、交差道路を左側から進行してくる車両の進行を妨げてはならない左方車優先の原則によります。

また、広狭差のある交差点で、A車とB車が交差道路からそれぞれ交差点に侵入し、A車が広路を直進中、狭路から広路への右折中のB車と衝突して事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車20%B車80%です。この場合、B車から見て、A車が右方車であろうと左方車であろうと、過失割合は変わりません。

同じく、広狭差のある交差点で、A車とB車が交差道路からそれぞれ交差点に侵入し、A車が狭路を直進中、B車が広路から狭路へとA車の進行方向に対向方向へ右折して事故を起こした場合の過失割合はA車60%B車40%です。

また、同じ条件で、A車が狭路を進行中、B車が広路から狭路へA車の進行方向と同一方向へ右折して事故を起こした場合の過失割合は、A車55%B車45%となります。

なお、ここで、B車がA車の対向方向に右折中の事故の方が、同一方向へ右折中の事故よりも、A車の過失割合が高いのは、道路交通法第36条にもとづく、交差する道路を左側から進行してくる車両の通行を妨げてはならないとの規定による、左方車優先の原則があるからです。

一方に一時停止規制のある交差点での事故の場合

交差する道路の一方に一時停止規制がある場合の、右折車と直進車が交差点内で衝突する事故の過失割合について考えてみます。この場合は、当然ながら、一時停止規制のある道路から侵入する車の過失割合が高くなります。

まず、右折車の側に一時停止規制がある場合の過失割合は、直進車をA車、一時停止規制のある方の道路から交差点に進入する右折車をB車とすれば、A車15%B車85%です。この場合は、B車からみてA車が右方車でも左方車でも、過失割合に変化はありません。

反対に、直進車であるA車側に一時停止規制があり、右折車であるB車側には一時停止規制がない場合を考えてみます。この場合、A車から見てB車が左方車であるか右方車であるかによって、過失割合は異なります。

B車がA車の進行方向の対向方向に対して右折しようとして事故を起こした場合、B車はA車の左方車となり、過失割合は、A車70%B車30%になります。一方、B車がA車の進行方向と同一方向に対して右折しようとして事故を起こした場合、B車はA車の右方車となり、過失割合はA車60%B車40%となります。

一方が優先道路の交差点での事故の場合

直進車であるA車が優先道路を進行中、非優先道路から優先道路へ右折しようとしたB車と事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車10%B車90%です。この場合、B車からみてA車が左方車であろうとも右方車であろうとも、過失割合に変化はありません。

また、直進車であるA車が非優先道路を走行中、B車が、優先道路から非優先道路へ、A車の進行方向の対向方向へ右折中、事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車80%B車20%です。

最後に、直進車であるA車が非優先道路を走行中、B車が、優先道路から非優先道路へ、A車の進行方向の同一方向へ右折中、事故を起こしてしまった場合の過失割合は、A車70%B車30%です。

信号機のない交差点での直進車同士の事故の過失割合

信号機のない交差点での直進車同士の事故の場合の4パターン

信号機のない交差点でも交通事故はよく起こります。この信号機のない交差点は4つのパターンがあります。

  1. 道路幅がほぼ同じ交差点
  2. 一方が明らかに広い道路の交差点
  3. 一方に一時停止の規制のある交差点
  4. 一方が優先道路の交差点

道路幅がほぼ同じ交差点での事故の場合

まず、①について説明します。道路幅がほぼ同じ交差点での直進車同士の交通事故の場合、事故の過失割合は車の速度と右方車と左方車の別で決まります。なお、右方車とは、車の右側から衝突される車のことで、左方車とは、車の左側から衝突される車のことです。

交通ルールには、原則として、左側の通行を妨害してはならないというルールがあります。したがって、右方車は、左側からくる左方車の走行を妨げてはなりません。左方車が優先車となり、この原則に違反して事後を起こした右方車が、より重い過失割合を負担します。

さて、A車を左方車、B車を右方車とした場合、交差点に侵入する際、両者が同程度の速度であった場合、過失割合はA車40%B車60%となります。なお、A車の過失割合が低いのは、左方車優先の原則があるためです。

一方、優先車であるA車が減速せず、B車が減速して交差点に侵入し、事故を起こした場合、過失割合はA車60%B車40%です。反対にA車が減速してB車が減速せず、それぞれ交差点に侵入して事故を起こした場合、A車20%B車80%の過失割合となります。

一方が明らかに広い道路の交差点での事故の場合

続いて②の場合です。一方が明らかに広い道路の交差点では、左方車・右方車の区別よりも、事故車が広い方の道路を走行していたか、狭い方の道路を走行していたかが重要になります。

広い方を走行していた車両が優先車となりますから、狭い方を走行していた車が原則としてより重い負担を負います。広い道路を走行していた車をA車、狭い方の道路をそうこうしていた車をB車としますと、A車とB車が同程度の速度で交差点に進入しシコを起こしたしまった場合の過失割合はA車30%B車70%です。

次ぎに、A車が減速しないで交差点に侵入し、B車が減速して交差点に侵入し、衝突した場合、過失割合はA車30%B車70%です。反対に、A車が減速して侵入し、B車が減速しないで侵入した場合、過失割合はA車10%B車90%です。

さらに、A車が減速した上徐行して交差点を通過し、B車が減速せず交差点に進入して事故を起こした場合、過失割合はA車0%B車100%となり、自己の責任は完全にB車が負担します。

一方に一時停止の規制がある交差点での事故の場合

③の一方に一時停止の規制のある交差点では、一時停止のある方の道路を走行中に事故を起こしたかどうかと、交差点進入時に減速をしたかどうかで、過失割合が決まってきます。

一時停止の規制のない方を走行していた車をA車、一時停止の規制のない方の道路を走行していた車をB車とします。この場合、両車が同程度の速度で交差点に侵入し、事故を起こした場合、過失割合はA車20%B車80%となります。

次ぎに、A車が減速しないで交差点に侵入し、B車が減速して交差点に侵入し、事故を起こしてしまった場合、過失割合はA車30%B車70%です。反対に、A車が減速して交差点に進入し、B車が減速しないで交差点に進入した場合の過失割合は、A車10%B車90%です。

また、A車が減速した上徐行して交差点を通過し、B車が減速しないで交差点を通過中事故が発生した場合には、A車0%B者100%の過失割合となります。この場合には、B車が自己の責任のすべてを負うことになります。

一方が優先道路の交差点での事故の場合

④の一方が優先道路の交差点の場合は、優先道路を走行中の車をA車、優先道路でない方の道路を走行している車をB車とすると、両者の交差点への進入速度に関わりなく、過失割合はA車10%B車90%となります。

最後の、一方が優先道路である交差点における交通事故に関する過失割合については、優先道路側を通行していた車の中には、上記の①から④までの優先関係の中でもっとも強力な優先関係が付与されます。

なお、今までに述べてきたのは基本過失割合です。実際の過失割合の算定に際しては、基本過失割合をベースに、相手車の明らかな交差点への先入、自車が大型車、などの修正要素を考慮し、基本割合を適宜に加減します。

信号機のある交差点での直進車同士の自己の過失割合

信号機ありの交差点での直進車同士の事故の過失割合の定まり方

信号機のある交差点で、直進車同士の自己の過失割合を考えてみます。このケースでは、交差点進入時の信号機の表示をベースに基本過失割合を決定し、それに修正要素を加味して、最終的な過失割合を決定します。

基本過失割合について

まず、交差点を直進中のA車とB車が衝突事故を起こした場合、A車の交差点進入時の信号機の表示が青、B車のそれが赤(B車が信号無視をして交差点に侵入してきた場合)であったとした場合、A車0%B車100%です。

次にA車の信号表示が青、B車の信号表示が、信号残りの場合は、A車30%B車70%です。なお、信号残りとは、B車が交差点進入時は青信号であったが、交差点を通過しきれないうちに信号が青から赤に変わった場合のことをいいます。

渋滞などで、交差点通過中に信号が青から赤に変わってしまうことはよくあります。その場合に、交差点中にB車が停車中に、青信号で交差点に進入してきたA車が、B車に衝突したような場合が該当します。

次は、A車が黄色信号で交差点に進入し、B車が赤信号で交差点に侵入し、交通事故を起こしてしまった場合です。この場合の過失割合はA車20%B車80%です。最後に、A車が赤信号で交差点に侵入し、B車も赤信号で交差点に侵入した場合は、A車50%B車50%の過失割合となります。以上が基本過失割合です。

修正要素の加減について

これに修正要素が考慮されます。主な修正要素は、相手車の明らかな先入、自車が大型車、自車の減速・徐行せず、です。相手者車が明らかに交差点に先に入っていれば、自車には、停止するなり進路変更するなどして、事故を回避する義務が発生します。

その義務に違反して事故を起こしているので、過失割合が加算されます。また、自車が大型車である場合も、大型車の場合、交差点での事故は重大事故につながりやすく、より慎重に運転すべきところ、事故を起こしてしまったということで、過失割合が重くなります。

交差点は、減速や徐行をして時速20km以下で走行するように交通ルールに定められています。このルール違反をした場合にも、過失割合が加算されます。修正要素による基本過失割合の変更の程度は5%~20%程度です。最終的な過失割合は、基本過失割合にこの修正要素を加減して判断されます。

車同士の事故の過失割合

車同士の事故について

スピードの出しすぎによりセンターラインを超えてしまい、対向車と衝突してしまったり、交差点で、右折のタイミングを間違ってしまい、直進してくる車と接触するという車同士の交通事故はよく起こります。この車同士の交通事故の過失割合について考えてみます。

複雑な車同士の事故

なお、車同士の事故の場合、歩行者と車の事故に比べて、複雑な場合が多くなります。センターラインを超え対向車に衝突した場合や、一方が赤信号で交差点に侵入して、青信号で交差点を走行中の車に衝突した場合には、過失割合は0%:100%ではっきりしており、問題は起こりません。

しかし、事故の中には、事故状況を客観的に証明できる証拠が少なく、上の例のようにはっきりと過失割合を提示できない場合があります。そのような場合、示談交渉がまとまりにくくなります。

客観的な証拠がないと、どうしても、事故の当事者は、互いに相手側の過失がより大きいと主張する傾向に拍車がかかるからです。車同士の事故の場合にも、過失割合の基準は定められております。

しかし、たとえば、道路幅がほぼ同じで、信号機のない交差点における事故については、事故車が交差点進入時に減速したかどうかで、過失割合が20%も変わってきます。事故車が交差点進入時に減速したかしないかを客観的に証明することは非常に困難です。

運転者が、減速しないのに減速したと主張した場合、事故状況からそれが嘘であると簡単に証明できればいいのですが、そうでない場合、当事者の事故に対する証言を元に判断することになります。

その場合、片方は減速したといい、片方は減速しなかったというに決まっています。どちらの言い分が通るかで過失割合が20%も変わってくるので、当然に、もめることになります。

示談交渉に必要な心構えについて

交通事故の当事者となってしまった場合には、示談交渉に臨むことも多々あることと思います。その際には、車同士の交通事故の場合には、客観的証拠はいうまでもないですが、事故の証言や示談交渉次第で、過失割合が大きく変わってくることを、事前に、よく理解しておく必要があります。