初めての自動車保険の基本。自賠責保険と任意保険の違い

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自動車保険は大きく「自賠責保険」と「任意保険」の2つの分けられます。「自賠責保険」は、人身事故の相手への損害賠償のみが対象で、相手の車への損害賠償や、自分のケガの治療費は補償の対象外です。また保険金額にも上限が決められています。「任意保険」は、自賠責保険の限度額を超えるような人身事故の相手への補償、自賠責保険で補償されない、相手の車や物の損害、さらには自分自身の怪我や自分の車の修理費などを補償してもらう保険です。「自賠責保険」は、車の所有者に対して法律で加入が義務付けられていますので、「強制保険」と呼ばれることもあります。「任意保険」はその名のとおり、加入するしないは任意ですが、万が一事故を起こした場合の相手への損害賠償などを考えると、加入しておくべきでしょう。
記事監修者紹介
ファイナンシャルプランナー髙橋洋子髙橋 陽子
日本生命保険相互会社にて3年半以上勤務し、年間100組以上のコンサルティングを行う。
その後、2019年4月より当メディアにて保険をはじめとする金融記事の監修を務める。

自賠責保険の補償内容

自賠責保険の補償内容は死亡後遺障害傷害に分けられており、身体の補償のみとなっています。また補償金額も無制限ではなく上限が定められています。具体的な補償内容や補償額は以下の表のとおりになっています。

補償対象 補償内容 支払い限度額

葬儀費 60万円(立証資料があれば100万円) 3,000万円
逸失利益 被害者本人が生きていれば得られたであろう収入
慰謝料 ・被害者本人:350万円
・被害者遺族:550万円~750万円
(1名:550万円、2名:650万円、3名以上:750万円)
・被害者に被扶養者がいる場合は更に200万円追加



逸失利益 被害者本人が後遺障害にならなければ得られたであろう収入 ・神経系統・精神・胸腹部臓器への著しい傷害
ー常時介護を要する場合:4,000万円
ー随時介護を要する場合:3,000万円
・上記以外の後遺障害
ー等級に応じて3,000万円~75万円
慰謝料 ・神経系統・精神・胸腹部臓器への著しい傷害
ー常時介護を要する場合:
1,600万円(※1,800万円)+初期費用500万円
ー随時介護を要する場合:
1,163万円(※1,333万円)+初期費用205万円
※被害者本人に被扶養者がいる場合
・上記以外の後遺障害
ー等級に応じて1,100万円~32万円

治療関係費  治療費、看護料、諸雑費など、基本的に実費が支払われる 120万円
文書料 交通事故証明書、印鑑証明、住民票発行などに要した費用
休業損害 1日5,700円(これ以上の収入減の立証があれば1日19,000円を限度してその実額)
慰謝料 1日4,200円

自賠責保険の補償限度額は死亡の場合が3,000万円、後遺障害の場合が程度により75万円から3,000万円までとなっており、常時介護を要する場合は4,000万円までに引き上げられています。さらに傷害については120万円までの補償額となっており、ケガの程度により補償額が異なります。傷害についての自賠責保険の具体的な補償の中身を見ると、治療に関係する費用については応急手当や入院および通院などの費用は実費分が補償されます。

加えて整骨院などを利用した場合にも実費が補償されます。また医療保険や傷害保険の請求時にも必要になる診断書の発行については発行のための費用の実費分が補償されます。またケガにより仕事を休まなければならなくなった場合の休業補償については1日あたり5,700円が休業損害として補償されますが、これ以上の収入減が立証されれば程度や認められた状況により最高19,000円までの補償を受けることもできます。また、1日あたり4,200円の慰謝料が補償されます。

それぞれの補償額をよく見てみると、一般的な補償額としては少ないことがわかります。たとえば死亡した場合は3,000万円となっていますから、扶養家族がいたり、将来のある若者が死亡したりした場合には到底まかなえる額とはいえません。仮に相手が亡くなってしまった場合、精神的な苦痛を埋め合わせるためにはお金による補償以外にはありませんから、自賠責保険の補償だけでは不十分であることがわかります。後遺障害についても同様で、過去の裁判事例では1億円を超える損害賠償請求がされたケースも有ります。これは自賠責保険だけで賄える額ではありません。ですから自賠責保険だけでなく任意保険に加入する必要があるのです。

自動車保険はどのような仕組みになっているか?

自動車保険とは自動車の利用に伴い発生しうる損害を補償するのが目的です。自動車による損害が発生した場合、その損失の度合いに応じて保険会社が定めた保険金が支払われます。補償の対象は契約内容に応して、自分や搭乗者への補償相手への補償身体の補償財産の補償に大別できます。

身体や財産の補償に加えて、事故により仕事の休業を余儀なくされた場合の損失など、事故に付随する損害に対しても補償されます。

身体の補償 財産の補償
自分や搭乗者への補償 ・治療費、入院費、それらに付随する雑費 ・車両や車載品
相手への補償 ・治療費、入院費、それらに付随する雑費
・事故が無ければ得られたはずの収入
・葬儀費(死亡した場合)
・慰謝料
・車両や車載品
・ガードレール、カーブミラーといった公共物
・事故に巻き込まれた家屋など第三者の財産

自動車保険は2階建て構造

自動車保険には自賠責保険任意保険の2つがあり、2階建ての補償となっています。

自賠責保険は自動車および原動機付自転車を所有しているすべての人に加入が義務づけられている強制保険です。もし強制保険への加入がないことが明らかになった場合は法律により厳しく罰せられます。また違反点数6点となり即免許停止処分になります。

これは自動車だけでなく原付きにも当てはまります。仮にこの保険に加入していない原付きを運転した場合でも同様の処分を受けることになりますから要注意です。

  • 1年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金
  • 違反点数6点で免停処分

自賠責保険は事故による被害者救済を念頭に補償が設定されているため、事故を起こした場合の相手への補償である対人賠償補償に限られています。破損させてしまった相手の物や自分への補償は設定されていません。その他の補償は任意保険で担うことになります。任意保険に加入することで万が一のさまざまなリスクに備えることができるようになるのです。

どうして自動車保険は必要なのか?

自動車の運転に自信を持っている人の中には、事故を起こす可能性はまず無いのに、なぜ自動車保険に加入する必要があるのかと考える人がいます。自賠責保険で対人補償があるわけですから、わざわざ任意保険にまで加入する必要がないと考えるかもしれません。

数十億円もの資産があり、万が一の治療費や死亡保険金に相当する額の補償を自分自身で行なえるなら、わざわざ保険に加入する必要はありませんが、それだけの補償ができるのは限られた人たちだけです。多くの人にとって多額の賠償を自分ではできないのが実情です。

意外に多い無保険車

交通事故に遭う可能性はだれにでもありますし、ケガをしたり死亡したりする可能性もあります。どんなに運転に自信がある人であっても、事故を起こさないとは限りません。統計によると自動車保険への加入率は70%ほどで、10台中3台は無保険車であることがわかっています。

無保険車による事故に遭遇する確率は10%から50%の間です。つまり、かなりの確率で無保険車が事故を起こしており、被害者が損害賠償を満足に受けられない実態が浮き彫りになっています。

自動車保険に未加入の場合の補償

人の命はお金で買うことができませんが、万が一事故で相手を死亡させてしまった場合、お金をもってしか償うことができません。仮に自動車保険に未加入であれば、数千万もしくは数億円の賠償を一生かかって行なう必要があり、人生そのものを台無しにしかねません。

また同乗者に対しても、保険に加入していなければ満足の行く補償を与えることができず、辛い人生を送らせる原因を作ってしまいます。相手方の車や所有物への賠償も高額になります。これらのリスクを金銭で埋め合わせるのが保険の役割であり、自動車保険に加入する必要性は大きいことがわかります。

さらに自分の経済的損失を埋め合わせることもできます。自損事故を起こした場合、自動車保険に加入していれば治療費や療養費についての補償を得ることができますし、仕事で働けなくなってしまった場合の経済的損失を保険がカバーすることで家族の生活を守ることができます。