自動車保険における「全損」とはどういう意味?

自動車保険全損

記事監修者紹介
ファイナンシャルプランナー髙橋洋子髙橋 陽子
日本生命保険相互会社にて3年半以上勤務し、年間100組以上のコンサルティングを行う。
その後、2019年4月より当メディアにて保険をはじめとする金融記事の監修を務める。

自動車保険における「全損」とは

 自動車保険には車両の損害を補償する車両保険が付帯されています。車両保険は自動車が被った損害に応じて契約している保険金額の範囲内で補償されることになっています。自動車が事故により損害を受けた時に全損扱いとなる場合があります。

 自動車保険における「全損」とは、契約している車両保険金額を修理費が上回った場合、対物賠償で時価評価額が修理費を上回った場合、もしくは車が盗難に遭いそのまま見つからなかった場合のことを指します。車両保険を契約している場合、全損扱いになると保険金額が全額支払われることになります。

 具体的には自分が加害者となり、自らの運転する車が損害を受けた場合、修理費が100万円で車両保険金額が80万円の場合には80万円が保険金として支払われることになります。20万円の差額を自分で支払って修理する場合についても80万円までの補償になります。

 盗難の場合、車そのものが損害を受けているかどうかはわかりませんが、見つからなければ損害によって修復できなかった場合と同じと考えられますので全損扱いとなります。

対物賠償における全損時の扱い

 相手から衝突された場合の対物賠償による補償は、基本的に修理費全額になりますが、修理費が時価評価額を上回った場合には、時価評価額を上限に保険金を支払うことで示談を成立させる場合があります。加害者側の対物賠償保険が無制限であっても、全損を盾に修理費全額を補償しないケースがあります。

 具体例として、交通事故で相手の車が大破し、修理費用が200万円になったとします。相手の過失割合が0の場合、時価評価額が150万円の場合は、150万円が補償されますが、差額の50万円は補償されないことになります。過失割合によって補償金額は変わってきますが、時価評価額を超えることはありません。

全損事故で示談をスムーズに進めるために

 交通事故の示談交渉でもめる原因になるのが、これまでに取り上げた全損事故の事例です。被害者側としては、自分が悪くないにもかかわらず全額補償されないことに納得出来ない場合もあります。このような事態を回避するために、全損時に差額の修理費用を補償する特約を付帯できる場合があります。